いつもと違うサマチャン

こんにちは、斎藤です。

初めましての方も多いかもしれないので、簡単に自己紹介します。

茅原実里さん音楽プロデュースを担当しています。

2018年までは株式会社ランティスの社員でした。2018年春からは起業し株式会社ハートカンパニーという会社でやっています。今は主に茅原実里さんにおいては音楽制作やライブ制作に特化して関わる形になっています。どうぞよろしくお願いします。

初めての方も、ベテランの方も、色々な方が読んでくださることを願って、このブログを書いています。ですので「そんなの知ってるよ」みたいな話もたくさん書きますが、「え、そうだったんだ!」的な話もあるかと思います。きっと長いブログになりますが、お時間あるときに少しずつ読んでくださったら幸いです。

さて。

ここ数年、色々なことが起こりますね。2018年に起業したことが自分的には大きな出来事ではありましたが、2019年も2020年も色々なことがありました。今年は新型コロナウイルスですね。

気づいたらもう7月です。この半年の過ぎ去ることの速さたるや驚きです。コロナ以前も毎日過ぎ去るのが早いと感じていたのですが、この半年の速さは怖いくらいです。

時間の体感スピードが変わったような感じがします。過去の経験値の総量が増えるほど時間の体感スピードは速まる説があります。小学校の時の夏休みの1ヶ月は無限の長さに感じていたのに大人になってからの夏の1ヶ月はあっという間に過ぎるね、というやつです。

コロナでの自粛&リモートワークは多くの人が未経験な体験だったので時間の流れは遅く感じるかと思いきや、今まで以上に過ぎ去るスピードは速く感じてしまいました。

外に出ないで過ごしていると新規の経験や体験が少ない。少ないと思い出せる「フック」が減る。例えば5月頭ころ何をしていたか?と聞かれた時に、「○○のライブに行ったな」とか「○○へ出かけたな」とか、そういう記憶のフックがあれば思い出しやすいはず。しかしずっと室内に居たのでフックが無い。リモートワークで仕事はたくさんしていたけれど、「仕事していたな」という大まかな想い出でしかないので、具体性を持って思い出すことが難しい。

ゲームで例えるとセーブポイントが存在してないまま進行し続けたみたいな感じでしょうか。ちょこちょこセーブポイントがあればそこに戻ることもできるのですが、セーブできてないから戻れない感じ。(ちなみにこのコロナ自粛期間を使って「DEATH STRANDING」の国道を全線復旧させることが出来ました。)

記憶のフックは視覚と聴覚によるところが大きいんだなと思いました。パソコンを使ってメール、リモート会議、データのやりとりはずっとやってますが、視覚と聴覚的には変化が少ないわけです。

自粛期間中毎日見ていた風景

そんな中、フックと言えるものがありました。

「サザンオールスターズ」の配信ライブです。とても楽しいライブだった。「Bye Bye My Love」ってAメロが素晴らしいなと改めて気づきました。

さて、あのおかげで今から半年後や1年後に2020年6月は何してた?と振り替えるときに「サザンオールスターズの配信ライブを観たなぁ」と思い出すことが出来ます。

記憶の「フック」は生きていく上でとても大事なものなんですね。

さて、河口湖ステラシアターでのライブの話です。

ファンの皆さんは毎年8月を想い出の「フック」にしていると思います。河口湖に行って、街の優しさに触れ、風景の美しさ、空気の澄みやかさ、仲間とのふれあい、ライブの熱さ、そして余韻をたっぷり味わいながらの帰宅。視覚、聴覚をフル稼働させて大きくて多数の「フック」を作ってきたと思います。

我々スタッフ的にもその「フック」は大きく。毎年のこのライブで何をやったか?を想い出の基準にしているところがあります。BBQで豚の丸焼きを買っていったのはあの年だったとか。ステージ上で踊り狂ったのはあの年だったとか。サマ鳥の空気が抜けて首がグワングワンになったのはあの年だったとか。

茅原実里さんにとってもその「フック」は非常に強く。

「フック」は欲しい。

ところで、アッパーやストレートよりもフックだね、みたいなギャグは100%滑るので注意です。

人は想い出の生き物なので、「フック」を作るのは大事なことで、そのためにお金を払ったりもらったりしているのかもしれないとすら思います。

今年の2月~3月ころは、8月頭には元の世界に戻っているだろうと思っていました。今思えば楽観視だったわけです。

しかし、そうはならなくて、通常通りのコンサート開催が困難になってしまったわけです。

河口湖ステラシアターでのライブはどうするか?8月が近づくにつれスタッフ陣の悩みは大きくなれど明確な正解がありません。

中止するか形を変えてやるか。

ライブの主(あるじ)はランティスレーベルなので、最終的な結論はランティスレーベルでくだされます。今のプロデューサーは鈴木めぐみさんです。実名出しても良いでしょう。僕の後任で茅原実里プロデューサーをしっかりやっていただいています。その彼女を中心としてレーベルとして「形を変えての実施」という判断になりました。「無観客」「有料配信」。まずここは大きな覚悟だったと思います。

場所はどうするのか。

都内スタジオやライブハウスから有料配信するという案もありました。しかしながら10年以上、河口湖ステラシアターからお届けしてきているライブです。無観客であっても河口湖ステラシアターでやることに意味があるのではないか。2020年は無観客でも、2021年からはまた観客有りで実施出来るのではないか。このライブは河口湖で暮らす方々の有形無形の支援と応援の上に成り立っているライブです。ここでライブを開催することが少なからず河口湖という場所の価値を向上させ、多少なりとも経済が回るきっかけになっている。そのことはスタッフ一同が自覚しています。であるならば、2021年以降に繋げるためにも「河口湖」という場所からお届けすることが重要だろうと。元の世界に戻ったらまた河口湖ステラシアターに集まりましょうね、というメッセージになれば良い。

そんな心意気があり、場所は河口湖ステラシアターからとなりました。

考えることは多大にあります。映像だけでライブの一体感を生み出せるのかというエンタメ的な問題。河口湖に行って、空気も含めて体感するからこそのこのライブの楽しさをどうやったら配信で届けられるか。もちろん経済的なことも。

などなど。色々な「リスク」があります。

リスクは避けるべきというのが一般的な考えかもしれないですが、リスクを取った方が先々勝てるという法則もあります。ここでリスクを取りに行ったのは長い目で見るときっと良い結果をもたらすと思います。何を持って「勝った」「良い結果」と判断するかは様々です。そしてどのくらいの期間で結果が出た出ないを判断するのかも様々です。長期的な視点で結果を判断すると、ここでリスクを取りに行ったのは良い結果になるはず。

そういう覚悟を背負って開催を決定したレーベルが、「やってよかった」と思える本番を迎えたい。

さて。

河口湖ステラシアターでのライブは今年で12年目。考えてみると長い月日なのです。小学校1年生だった人が高校を卒業するという時間が12年です。

そうなると昔から知っているという方だけではなくなってくるわけです。

既存のお客様だけではなくて今年からこの存在を知った方にも丁寧に説明すべきだろうと思います。長年やっていると、どうしても毎年来てくださるお客様に向けたライブになりがちですが、12年もやっているなら世代の入れ替わりもあるだろうから、改めて丁寧に説明していく時期だと思います。

そういうわけで、サマチャンというのは何なのか。ということを説明する場があっても良いだろうと思ったので、そういうことを今回は書いてみようと思います。

便宜上、サマチャンと称していますが、この12年の間に名称が3回変わっています。

まず、今使っている「サマチャン」というのは「SUMMER CHAMPION」の略称です。その前は「サマドリ」。「SUMMER DREAM」の略称。さらにその前、初代は「サマキャン」。「SUMMER CAMP」の略称。

気まぐれで変えているわけではなくて、組織の変化やチームの状況変化に合わせて対応して名称を変化させてきています。

3回も名称が変わっているとスタッフ間で会話しているときに、ちょっとした不便も生じます。「5年目のサマチャンだけどさ、、」みたいな会話。あ、5年目はサマチャンじゃなくてサマドリだ。。。みたいなことがあるわけです。なので「河口湖ライブ」と称したりもします。

なぜ野外のライブをやることになったか。

茅原実里さんが音楽活動を再開して少し経ったころに、野外でのライブもやってみよう、という話になりました。チーム全体が若かったので何でも興味あることはやってみていました。とりあえずやってみる精神です。実験的なイベントもたくさんやりました。記者会見とか。ラジオの公開収録と称しつつ、アルバムの制作発表会も兼ねていたとか。思いついたらやってみる、というスタンスであれこれやってました。そんな中での野外でのライブ論。

色々な場所を検討しました。何カ所か見に行ったような記憶があります。そのうちの1つが河口湖ステラシアターでした。

ステラシアターは圧勝だったのです。

河口湖という場所の素晴らしさ。座席からステージの観やすさ。そして何よりも屋根を開けたり閉じたりが気軽に出来るという点。野外でかつ、標高が高いので天気が変化しやすい。雨が降ったら屋根を閉めて、やんだら開ける。天候を気にせずライブが出来る野外ライブ会場。まさかそんな会場があるとは。気軽に開け閉め出来るのです。ボタン1つです。5分で開閉します。そういうわけで、ライブ中は常にYahooの雨雲レーダーを観てます。あれはかなり正確。怪しくなったら「ちょっと閉めとくか」と。それが出来るのが強い。

豆知識。

河口湖ステラシアターの屋根稼働は、途中で止められません。一度「開く」ボタンを押したら開き切るまで止まりません。逆に「閉まる」ボタンを押したら、閉まり切るまで止まりません。開くのにも、閉じるにも5分。山の天気は変わりやすい。「雨が降ってきたので屋根を閉め始めたけど、すぐやんだからやっぱり開けておこう」と思うこともあります。が、途中で止められないので閉め切るまで待ってから、また開けるをしないといけない。その5分待つ間に1曲終わります。なので、この開閉システムを理解した上で屋根の開け閉め判断をしています。

時々失敗します。タイミング失敗したら笑います。どうにもならないときは笑うしかない。成功することもあります。「会いたかった空」を歌う直前まで雨雲がありましたが、ちょうど歌い始める少し前に雨雲が去ったので、屋根を開け始めました。ちょうど曲の素敵な箇所で屋根が開きました。「空」に「会えた」わけです。まさに「会いたかった空」。こういうミラクル演出も生まれたりします。

初年度の河口湖ステラシアターライブがあまりにも素晴らしい体験だったので、2年目もやろうとなりました。2年目も成功。じゃあ3年目も。。と続いていきました。

継続していくと、徐々に地元との連携も生まれます。駅に垂れ幕付けさせてもらったり、電車をラッピングしたり。バスの車内アナウンスをオリジナルのものにしたり。地元のパン屋さんとコラボしてオリジナルパンを作ったり。ショッピングセンター「BELL」さんの1Fで写真展やったり。茅原実里さんが山梨県の「やまなし大使」になったり、富士急ハイランドの「絶叫大使」になったり。

ライブの内容。

河口湖ステラシアターでライブをやるまで、茅原実里さんのライブは演出をガッチリ決めてやっていました。今でも基本的にはそうしています。練り込んでいきます。

ですが、初年度河口湖ステラシアターの時は「野外だから割と気楽にやるのだ」的なムードがたっぷりありました。茅原実里さん本人も「こういう自由なライブも楽しい」という発見があったようです。河口湖まで行く、修学旅行的なワイワイ感がある、スタッフやバンド全員で食事をする、一緒に泊まる、などなど。非日常空間の連続が心を解放します。スタッフも茅原実里さんも全員、少し気持ちがウキウキした状態になるので割となにをやっても、まぁいいか、的な空気になります。それがライブやMCの自由さに繋がります。

「風が吹けば桶屋が儲かる」的なことはライブの現場にも起こります。ほんのちょっとしたことの積み重ねが最終的にステージ上の良い空気に繋がるものです。BBQで食べた肉が美味しかった、というほんの些細なことが良いステージパフォーマンスに繋がることもあります。喜びや楽しさは連鎖しますので、茅原実里さんだけじゃなく、スタッフ1名1名が楽しいという前向きな気持ちを感じられると、良いライブが生まれます。河口湖ステラシアターでのライブの内容がいつも大変素敵なものになっているのは、そういう因果関係があるはずです。

これはお客さんにも同じことが起こっていると思います。お客さんにも風が吹けば桶屋が儲かるということが発生していると思います。だから、河口湖ステラシアターでやることはとても大事なのです。

では今年はどうなのか。

スタッフと出演者は河口湖ステラシアターに行きます。

でもお客さんは自宅などでの配信を観る形です。

お客さんの「非日常体験」はどう得られるべきなのか。これをまさに今色々な案を考えています。無観客だから出来る演出。配信でしか観られない映像。普通に客席でリアルに観ていたら観ることが出来ないような映像だったりカメラワークだったり。そういう「配信でしか体験できないこと」がきっと今回の「非日常」なのかなと、スタッフ間で話し合いを続けています。

河口湖ステラシアターまで来ていただくことは出来ないけれど、河口湖の街の良さや暖かさを伝える術もきっとあるはず、という議論もしています。

使える予算も人員も限られてる、状況は日々変化する。そういう中で、どこまでアイディアを出せるか、それを実現出来るかが、チームとしての勝負です。

配信ライブを観てくださるお客様においては、ぜひ「配信でみるサマチャン」がどんなものになっているか、ワクワクして待っててください。

チームの意思として。このライブのことも忘れずに覚え続けて欲しいですが、河口湖という街のことも覚え続けて欲しい、という気持ちでこのライブに臨みます。

そして色々なことが解決したら、また河口湖という街に遊びに行ってみてください。

久々に行く河口湖はやっぱり素敵なはずです。


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